2010年度 第8回講演会
『水素社会を切り拓く燃料電池車の現在と未来』

テーマ
『クリーンディーゼルで元気な日本の復活を!』〜クリーンディーゼル車元年の到来〜
開催日時
2010年12月22日(水) 13:30〜16:40
会場
大森ベルポート いすゞホール
全体概要
 エコカー補助金後遺症による自動車販売の落ち込みが危惧されており、今後の対応に関心が集まっています。昨今のEVブームも、新たなビジネスチャンスへの期待が過剰に膨らむ結果と言えなくもありません。
一方、本年2010年は、それ以降クリーンディーゼル車が次々と日本の国内市場を賑わわせることとなる“クリーンディーゼル車元年”と言われています。平成22年排出ガス規制(ポスト新長期規制)をクリアするクリーンディーゼル車は、PMやNOxの排出量がガソリン車と同程度に低く、動力性能にも優れかつ燃費が良いすなわちCO2排出が少ないということで、地球温暖化に対する環境対応としても現実的で極めて有効な手段に位置づけられています。
 このような状況の中で、メルセデス・ベンツ、アウディ、BMWなど先行する欧州勢が平成の黒船のごとく次々と我が国の市場に押し寄せようとしており、これを迎え撃つ日本勢も技術的には数段上回る実力を擁し着々と迎撃体制を整えてきているところでもあります。今時発表された新成長戦略〜「元気な日本」復活のシナリオ〜においても、我が国経済の行き詰まりの原因の一つに「技術に勝って事業に負ける」パターンが捉えられビジネスモデルの再構築が促されています。すなわち、オープンモジュールの中でブラックボックス化技術を明確に仕分けることとの理解でもあります。
 まだまだ健在な内燃機関自動車は日本の強みでもあり、摺り合わせ技術こそが日本のブラックボックスと言えなくもありません。摺り合わせ型産業の強みを活かすとともにクリーンディーゼルあるいはディーゼルHV(スーパークリーンディーゼル)をコア技術とするグローバル戦略こそが元気な日本の復活に繋がるものと確信されます。本講演会では、ディーゼル技術の最前線を紹介いただくくとともに、日本のクリーンディーゼル車開発の意気込みについて各講師よりお話しをいただきました。
 グリーンイノベーションの推進が新成長戦略に謳われており、地球規模の環境問題や資源問題の解決を図るとともに、我が国経済の成長、発展が望まれています。
 そのための重要な戦略として、新興国とのコスト競争などの消耗戦に巻き込まれないための方策もさることながら、これを避けるだけでなく戦う場面を想定した「コストイノベーション」の概念も必要と認識されています。
 つまり、製造コストを1/2〜1/3にまで下げられれば消耗戦で勝利することが可能かも知れません。必要となるのはそのための技術開発であり、従来の製造過程を根底から覆すようなアイデアが重要となります。当然、そこには多くのイノベーションが必要となります。2つの部品で行う機能を一つの部品で行えればコストは半分になるかも知れません。単に労働力だけでのコスト削減は消耗戦そのものです。
 一方、我が国は徹底したガラパゴス戦略で行くべきと言う意見もある中、つい最近には脱常識の超低価格日本車が新興国で発売されることになりました。技術を追求すべきか、コストで勝負すべきか、あるいはそのどちらも両立出来るのか、下記講演会では、我が国自動車産業の発展とディーゼル技術の復権を 一方、我が国においてディーゼル乗用車の普及拡大を図る上では、(初期コスト、維持費等)経済的な面での課題を克服する新たな発想に基づく戦略の必要性について再認識させられるような議論が行われた。期した内容のお話しが盛り込まれました。
講演1:<クリーンディーゼルのポテンシャルと技術最前線>
北海道大学大学院工学研究院教授 小川 英之 様
自動車用パワーソースとしてディーゼルエンジンの優れた特性を概説いただくくとともに、熱効率向上の可能性並びにディーゼルエンジンの新技術と今後という観点から、それらを支えるキーテクノロジーとされる過給とEGR,燃料噴射,燃焼,排気後処理,ハイブリッドシステムについて詳しく解説してただきました。
講演2:<三菱自動車の新型ディーゼルエンジン開発>
三菱自動車工業株式会社開発本部EV・パワートレイン要素研究部 部長 竹村 純 様
今春から欧州市場へ投入した乗用車用ディーゼルエンジン4N13型(1.8L)について、技術の詳細を詳しく解説していただきまいた。本エンジンでは、可変動弁系機構等の採用により乗用車ディーゼルとしては最も低い圧縮比 14.9に設定するとともに、性能、燃費、排ガス、静粛性を高次元で達成しEURO5にも対応したものとなっています。また、今秋から国内に投入したポスト新長期対応のパジェロ用ディーゼルエンジン4M41型(3.2L)についても技術的な特徴を解説いただきました。
講演3:<クリーンでグリーンなディーゼルエンジンを目指して>
株式会社 いすゞ中央研究所 エンジン研究第一部 部長 島崎 直基 様
ディーゼルエンジンの課題の一つである排気浄化(クリーン化)とCO2抑制(グリーン化)につながる高効率化技術について,商用車用ディーゼルエンジンを例に紹介していただきました。また、ディーゼルエンジンは輸送用動力源などとして人類の豊かな生活を支え、21世紀前半においてもその役割は重要であることの意義についてお話しいただきました。

前のページに戻る