2017年度 第3回(創立70周年記念)講演会

テーマ
『零戦と栄発動機〜先人達の技術の足跡を振り返る〜』
開催日時
2017年10月24日(火) 13:40〜17:00
会場
早稲田大学 西早稲田キャンパス 55号館N棟第二会議室
全体概要
「自動車技術会70周年記念冠イベント」の一つとして、零式艦上戦闘機(零戦)本体とその原動機である栄発動機、栄発動機用の気化器、そして零戦の設計者と自動車技術会の関係、という零戦に関係する3つについてご講演いただくとともに、実物の栄発動機の各種部品を展示させていただいた。
講演1:<零戦の堀越二郎氏と自動車技術会>
講師:東京大学大学院 工学系研究科航空宇宙工学専攻教授 鈴木 真二氏
堀越二郎は零戦の設計者で、宮崎駿監督の映画「風立ちぬ」の主人公のモデルとして知られる。零戦の設計者として航空技術の頂点にいた堀越は1947年(昭和22年)の自動車技術会の設立に関わり、理事の一人となっていた。堀越の活動を通して、航空機産業と自動車産業の関係をご講演いただいた。
講演2:<栄発動機用二聯一〇〇降流気化器>
講師:株式会社ミクニ渡辺 仁氏
社内の古い話を元に零戦に使われた気化器の図面を倉庫の奥から発掘し、昇流式と降流式気化器の図面のうち比較的揃っていた降流式気化器のものからの図面再生と構造機能の推定・解析を進め、3Dモデル作成を作成した。これらの経験をもとに70年以上前の先人の工夫をご紹介いただいた。
講演3:<零戦と栄発動機>
講師:元本田技研工業株式会社 エンジン設計室研究員 渡辺 信義氏
零戦の改良・発達・進化と大戦当時の性能比較検証を含めた概略解説および「栄発動機」の最大特徴である星型シリンダーレイアウト、マスターコンロッドとリンクロッドから成るクランク軸構成、星形シリンダー用のバルブ作動カム駆動機構、シリンダーヘッドとシリンダーの軽量化と冷却性の融合、吸気系構造と過給器および水メタノール噴射機構などの解説を通じて何故気筒数が奇数なのか? 何故2気筒飛ばしの点火順序なのか? と言った興味深い話を交えて現代のエンジン構造とは異なる先人の知恵をご紹介いただいた。
展示
栄発動機の部品中村 泰三氏
所有の栄発動機関連の実物展示物は、発動機の気筒とピストンなどの部品、発動機管制系の計器板、発動機管制装置(スロットル)、気化器の銘板などマニア垂涎のもので、講演開始前、途中の休憩時、終了後には多くの聴講者が写真を撮ったり、質問をしたりして盛況でした。
  • 2017年度第3回 講演会
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  • 2016年度第7回 講演会
幹事所感:(アンケート結果)
自技会関東支部と同じく古希を迎えた戦後生まれの幹事にとって、零戦は子供のころから名前とその雄姿はあこがれの的であったが、その設計者の意外な側面や、特徴のある独創的な構造などを知って、テーマである先達の技術の足後を振り返り温故知新、設計者の深い造詣を考えさせれられる有意義な講演会であった。またそれらの実物部品も併せて展示でき、惜しむらくは定員を超える参加人数を受け入れたため、部屋がやや窮屈であったのと、時間が短くバタバタしてしまった運営など今後の講演会を開催するうえで改善していく課題もあり、反省点もあった。

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